「小鍛冶」の舞台展開

​ここでは「小鍛冶」を8つの場面に分け紹介します。

写真 昭和62年 観世会定期能 シテ武田尚浩

​撮影 前島吉裕

1、宗近に宣旨が下る。
 一条天皇の勅命を携え橘道成(ワキツレ)が三条の小鍛冶宗近宅を訪問。宗近(ワキ)に御剣を打つように勅命が下る。宗近は神力を頼む為に稲荷明神を参詣する

 

2、不思議な少年の登場
 宗近が稲荷明神を参拝していると、ただ者とは思えない不思議な少年(シテ)が声をかけ、宗近がたった今受けたばかりの勅命の内容を言い当てる。

3、少年は剣の威徳を語る
 少年は宗近に中国の名剣の威徳を語る。そして、日本武尊の東征の時に草薙の剣によって窮地を脱して、敵軍を滅ぼした故事を引き、日本における剣の威徳を語る。

4、少年消え失せる。
 
宗近は剣の威徳を詳しく語る少年を不審に思い正体を尋ねるが、少年は御剣を打つ準備をして、私を待っていてほしいとのみ応え、稲荷山の向こうへ消えてしまう。

5、間狂言の登場
 シテの中入の後、ワキも中入し、その後に間狂言が登場し、これまでの物語の流れを振り返る。
間狂言が終わると舞台中央に鍛冶壇(一畳台)が置かれる。

 

6、宗近祝詞(のっと)を唱える。
 鍛冶壇が置かれると服装を改めた宗近が登場し、祝詞を謡い、御幣を振って稲荷明神に祈祷する。

 

7、稲荷明神の登場
 祝詞が終わると、早笛となり、稲荷明神が現れ、舞働という勇ましい舞を見せる。

8、御剣を打ち、献上する。
 宗近は稲荷明神の相槌を得て、御剣を打ちあげる。打ち上げた御剣は天下一の出来栄えで、稲荷明神の名に擬えて『小狐丸』と命名し、勅使へ献上し、稲荷明神は稲荷山の峯の彼方へと消えて行く。

●ひとこと解説

 『小鍛冶』は一曲の展開が早く、剣を鍛え上げるクライマックスに向けてどんどんと盛り上がっていく曲です。また、後場で稲荷明神が五穀成就を約束する事から大変おめでたい曲とされています。

小書きについて

 

●小書き「黒頭」
 黒頭の小書きが付くと、前シテの扮装が変わり、手には稲荷明神を表す稲穂を持っています。後シテの頭の毛が黒いに変わります。これによって通常は稲荷明神のお使いの狐が現れるイメージで跳躍的な動きが多いのに対して、黒頭は位がありながらもキレのある稲荷明神の御神体が現れたような雰囲気となります。

​写真は平成13年に観世会春の別会にて武田尚浩がシテを勤めた時のものです。

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