「心より心に伝ふる花」を目指して
「須磨源氏」の舞台展開
ここでは「須磨源氏」を5つの場面に分け紹介します。
写真 平成24年 研究会 シテ武田尚浩
撮影 前島吉裕
1、藤原興範(ワキ)一行の登場
日向国(宮崎県)の神主の藤原興範は伊勢神宮参拝を志し、舟に乗り、津の国(兵庫県)須磨の浦にやってきた。一行は光源氏ゆかりの「若木の桜」を見ようと船を止め、逗留することにする。
2、木こりの老人(前シテ)の登場
木こりが現れ、日々の生活を語り、花を一枝持って源氏のお墓に手向けようと謡う。
3、興範との問答
興範は花の前にいる老人にその花の来歴を尋ねると、この花こそ源氏物語の「若木の桜」であると答え、光源氏の来歴を語る。
光源氏は12歳で初冠をし、高麗の人に光源氏と名付けられた。帚木の巻で中将に、紅葉賀の巻で正三位になったが、朧月夜との関係で25歳の時に須磨へ、そして明石へと落ちて行った。しかし不思議の告げによって都へ上洛し、澪標の巻で内大臣、少女の巻で太政大臣、藤裏葉の巻で太上天皇へと登り、栄華を極めた光君であった。
そして自分は光源氏の幽霊であると明かし、夜に月と共に再び姿を現そうと言って消える。
4、所の者(間狂言)の登場
須磨の浦に住む者が現れ、光源氏の事を語り消える。
5、光源氏(後シテ)の登場
興範が奇特を待っていると、光源氏の幽霊が在りし日の姿で兜率天から現れ、妙なる音楽に興じて舞を舞い、夜明けと共に消える。
●ひとこと解説
須磨源氏は光源氏の概説書のような作品です。この作品が作られた中世当時の源氏物語は全文を読むのではなく、概説書などを読みあらすじを楽しむ読み方も流行っていました。その風潮の中で光源氏にスポットライトを当てて作られた作品と言えます。作者は世阿弥と言われていますが、作風が世阿弥らしくなく、世阿弥作ではないとの説もあります。