「熊坂」の舞台展開

​ここでは「熊坂」を6つの場面に分け紹介します。

写真 平成26年 松能会 シテ武田崇史

​撮影 前島吉裕

1、旅僧(ワキ)の登場

 囃子方、地謡が常の通り着座すると、旅僧が登場し、東国修行に思い立ち、都から近江路を通って赤坂の宿に到着する。

2、僧(前シテ)が回向を頼む

 僧形の者が登場し、旅僧に今日はある人の命日であるので、回向してほしいと頼む。旅僧は不審に思いつつも引き受ける。そして、僧は自分の庵へと旅僧を招く。

3、僧の庵室でこのあたりの事を語る

 旅僧が持仏堂で祈祷を始めようとすると、大量の武器が並べられているので、不審に思った旅僧は庵主の僧に理由を尋ねる。すると、庵主は山賊が多く出没し、それに襲われた人を助けるためだと答え、仏も武器を持ち仏敵を降伏することを語り、夜が更けると共に庵主と庵室は消え失せる。

4、里人(間狂言)が登場し熊坂について語る。

 里人は旅僧に熊坂長範の事を語り、旅僧は先ほどの庵主は熊坂であったと思い、回向を始める。

 

5、熊坂の幽霊(後シテ)の登場

熊坂が長刀を担ぎ、在りし日の姿で登場する。

6、熊坂が討ち入りを語る。

 ワキの求めに応じて牛若丸のいる赤坂の宿を襲った経緯を語る。

三条の吉次信高という黄金商人が毎年都で商売をしてその商品をもって奥州へ下ることを知った熊坂は全国から手練れの盗賊を集め、70人の大軍勢で吉次を襲う計画をした。場所は赤坂。ここは逃げ場も多く恰好の宿場であった。ちょうど赤坂に付いた吉次一行は早々と宴をはじめ、寝入ってしまった。

 その一行の中に16・7歳の牛若丸がおり、盗賊たちに目を光らせているとも知らず、熊坂盗賊団は松明を投げ込み一挙に攻め入った。

 しかし、牛若丸はひるむことなく応戦し、あっという間に13人を斬ってしまった。牛若丸の獅子奮迅の活躍に驚き、一時は退却を考えるが、大盗賊熊坂長範の名が廃ると長刀を手に引き返し、牛若丸に襲い掛かる。熊坂は様々な技を駆使して牛若丸を攻撃するが、牛若丸はひらりひらりと避け、遂には熊坂も切られてしまう。

そして、この赤坂の露と消えたことを語り、僧に回向を頼み、夜明けと共に消える。

●ひとこと解説

 熊坂長範は鼠小僧・石川五右衛門と並んで三大盗賊として知られ、一昔前までは映画の寅さんでも名前が上がるほどの大盗賊でした。前場はシテもワキも同じ姿という珍しい曲です。後場はいかに牛若丸に討ち取られたかを仕方話で語ります。舞台上にはいない牛若丸をお客様に想像していただく所がポイントになります。また最初は力が漲る熊坂が牛若丸に翻弄され段々と弱っていくところも見所です。
シテが長刀を使う曲はいくつかありますが、熊坂の長刀は鈍重な長刀使いと言われ、一方船弁慶は鮮血滴る長刀使いと言われています。
 これの類曲として「烏帽子折」があります。この曲は実際に牛若丸の所に熊坂が討ち入りをする部分が描かれています。

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