「玉鬘」の舞台展開

​ここでは「玉鬘」を6つの場面に分け紹介します。

写真 平成15年 観世会 シテ武田尚浩

​撮影 前島吉裕

1、旅僧(ワキ)の登場

 名乗り笛によって旅の僧が登場し、旅の途中奈良の寺々を廻って来たが、これから長谷寺へと向かう旨を語る。

2、舟に乗った里女(シテ)の登場

 一声によってシテが登場し、自らの寄る辺の無い境遇と初瀬川の流れの有様を語る。

3、里女との問答

 1人で舟に乗る里女を不審に思った旅人は声をかける。すると女はこの初瀬川は「海女小舟初瀬川」と古歌に詠まれる場所なので女性が一人で船に乗っていても不思議はありませんと答え、二人は長谷寺の御堂に参拝し、女は僧を二本の杉へ案内する。二本の杉は古歌にも詠まれた名所で、その昔玉鬘内侍が長谷寺に参拝した時に光源氏が玉鬘を見つけた場所であると語る。

4、里女が玉鬘の事を語る

 玉鬘は母の夕顔の上が亡くなると、はるか筑紫の国へ旅立ちました。しかし、都が恋しく、鄙の住いに耐えかねて都へ帰ってきました。そんな都でも頼りとなる人はなく、つらいばかりの日々。そんな中彼女がこの長谷寺に詣で、光源氏と亡き母の侍従右近に出会う事が出来た。今このお寺で旅の僧に会えたのも仏縁であるから玉鬘の事を弔ってほしいと語り、自分こそ、その玉鬘の幽霊であることをほのめかして消える。(中入り)

5、土地の男(間狂言)の登場​

 そこへ土地の男が現れて、今いた女性こそ玉鬘の幽霊であると言って、玉鬘の事を語る。そして僧へ玉鬘の菩提を弔うよう頼み消える。

6、玉鬘(後シテ)の登場

 僧が玉鬘の菩提を弔っていると、玉鬘が現れて仏にすがる心とは裏腹に恋の妄執に囚われた心を象徴する自分の乱れた黒髪を眺め、今なお執心に囚われる身を嘆きながらも、僧の弔いによって救われ、消える。

​●ひとこと解説

 能「玉鬘」は源氏物語の登場人物の玉鬘の一生を描いた作品です。玉鬘はその美しさから様々な男に言い寄られ、その運命を翻弄された女性です。玉鬘とはもともと女性の美しい髪やその装飾品の事を指していましたが、彼女の名前に由来して「どうにもならないこと」や「運命」を「玉鬘」と呼ぶこともあります。秋の長谷寺の風景描写が美しく、長谷寺の観音菩薩は当時女性を助ける仏様との信仰もありました。どう頑張っても運命の糸が絡まっていく玉鬘に一筋の光が差し込む謡は大きな聞きどころです。

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